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【歌詞和訳】Billy Joel「Piano Man(ピアノ・マン)」を和訳・解説してみた【洋楽】

 

 

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舞台は70年代のジャズバー

 

はじめに

ビリージョエルと言ったら、やっぱり「Piano Man」か「Honesty」。どちらの楽曲も、静かな演奏とは対照的な、直線的に本質を見抜くような歌詞が特徴的です。

筆者は、この楽曲を初めて聞いて、ビリー自ら奏でるピアノの強弱が特に印象に残りました。時に繊細で、ある時は荒々しく、そして最後はフェードアウトするように消えてゆく。

まさに人生そのものではないか、と。

 

多くの人にとって、大人になることはつまり、密かに育んできた「夢」を諦めることを意味しするでしょう。悔しい、けど、もう戻れない… 。

 

今回紹介する「Piano Man」の歌詞は、「夢」と「現実」の狭間に生きる人間そのものを、皮肉めいた口調で、等身大にリスナーに語りかける。

 

意訳

It's nine o'clock on a Saturday
The regular crowd shuffles in
There's an old man sitting next to me
Making love to his tonic and gin

 

土曜日の午後9時

顔ぶれがぞろぞろと集まってくる

隣に座る老人はさっきから

酒っていう恋人に夢中だ

 

 

He says, "Son can you play me a memory
I'm not really sure how it goes
But it's sad and it's sweet
And I knew it complete
When I wore a younger man's clothes."

 

そいつは言った「若いの、思い出のメロディーを奏でてくれないか」と

「もうすっかり忘れてしまったんだ

でもな、甘くも悲しくもある…最高の曲だったんだよ

これでも昔はちゃんと頭の中にあったんだぜ

服装まで若かった頃はな」

 

 

Sing us a song you're the piano man
Sing us a song tonight
Well we're all in the mood for a melody
And you've got us feeling alright

 

さあ歌え、歌ってくれピアノマン

俺たちのために今夜歌ってくれよ

そうさ、みんな君のメロディーに飢えてるのさ

ほら、俺らを愉快にさせてくれよ

 

 

Now John at the bar is a friend of mine
He gets me my drinks for free
And he's quick with a joke or to light up your smoke
But there's someplace that he'd rather be

 

バーにいるジョンとは友達なんだ

僕には何だってしてくれるさ

冗談もすぐに返すし、タバコの火だってつけてくれる

だけど、彼の居場所はココじゃない

 

 

He says,"Bill, I believe this is killing me."
As a smile ran away from his face
"Well, I'm sure that I could be a movie star
If I could get out of this place."

 

あいつは言うんだ「ここで俺はどんどん腐っていくんだ」

さっきまでの笑顔が消え去った

「俺はムービースターになれる自信があるんだ

もし、ここから抜け出せたらの話だけどな」

 

 

Now Paul is a real estate novelist
Who never had time for a wife
And he's talking with Davy, who's still in the Navy
And probably will be for life

 

ポールは作家かぶれのブローカー

あいつの忙しさときたら、嫁すら探せないまでだ

話し相手の、ネイビー(海軍)を抜けられないデイビー

こっちの方は一生そのままって気がするな

 

 

And the waitress is practicing politics
As the businessmen slowly get stoned
Yes they're sharing a drink they call "Loneliness"
But it's better than drinking alone

 

ウェイトレスの酔った客の扱い方も慣れたもんだ

見事な「駆け引き」だね、あれは

あいつらは「孤独」っていう酒を分け合ってるのさ

少なくとも、本物の「孤独」よりはマシなんだろう

 

 

Sing us a song you're the piano man
Sing us a song tonight
Well we're all in the mood for a melody
And you've got us feeling alright

 

さあ歌え、歌ってくれピアノマン

俺たちのために今夜歌ってくれよ

そうさ、みんな君のメロディーに飢えてるのさ

ほら、俺らを愉快にさせてくれよ

 

 

It's a pretty good crowd for a Saturday
And the manager gives me a smile
'Cause he knows that it's me they've been coming to see
To forget about life for a while

 

土曜にしてはなかなか盛況だ

そんな時、マネージャーは僕にそっと微笑むんだ

客はみな僕を見に来たって知ってるからね、

少しでも、現実から目を逸らすために

 

 

And the piano it sounds like a carnival
And the microphone smells like a beer
And they sit at the bar and put bread in my jar
And say, "Man, what are you doing here?"

 

そしてピアノはカーニバルのように唸り

マイクはビールのような香りを漂わせる

で、あいつらは僕の瓶にチップを入れながら

決まって「お前、なんでこんなトコでやってんだ」って惜しむのさ

 

 

Sing us a song you're the piano man
Sing us a song tonight
Well we're all in the mood for a melody
And you've got us feeling alright

 

さあ歌え、歌ってくれピアノマン

俺たちのために今夜歌ってくれよ

そうさ、みんな君のメロディーで何もかも忘れたいのさ

一時だけでも、俺らを愉快にさせてくれよ

 

 

さいごに

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Dream Big!

主人公である「僕」は、どのような立場にあるのだろうか。

彼は、才能がある。求められるものがある。

だが、一生ピアノと向き合うとは考えにくい。

"Man, what are you doing here?"からも、彼の人生における最終地点は、少なくともあのバーではない。

彼にも、歌詞中の登場人物のように、「夢」があったのかもしれない。

まだ彼は若いだろうし、可能性に溢れている。

 

しかし、歌詞の通り、彼の目に映る世界は、ひどく空虚なのだ。

もしかしたら、彼の「落ちぶれた」果てに、あのバーが在ったのか。

 

++++++

(追記)

人間だれでも、どこかのタイミングで懐古主義に陥ると思う。

昔はよかった。あの頃に戻りたい…。今なんて…。

そんな時YouTubeは弱った心に漬け込む。

昔の動画を延々と見てしまう。で、気がつくと一日が終わりかけているものだ。

それな生活を2、3日でも続けてしまえば、もう現実世界に戻りたくなくなる。

こうなったら、もう戻れない。

 

過去は、あなたを慰めてくれない。

所詮、現実逃避。それゆえの、「美化」に過ぎない。

わかっていても、それが「美しい」のには変わりない。

それだけ、時に過去は魅力的なのだ。

 

今この瞬間も、いつかは「過去」になる。

そうなった時、「過去を追いかける自分」の過去なんて美化できないに決まっている。

何も生み出していないんだ。ただ、時間が経つのみ。

 

せめて、未来の自分が「今の自分」を美しく感じられるように、1日を大切にしたい。

 

老いれば、いやでも過去を振り返らずにはいられないものだ、って聞く。

そんな時、啜る渋い緑茶を、深く味わえるだけの「今」を積み重ねたい。